死の向こう側にある変容。蠍座0度│二十四節気「霜降」

mugimaru

2025年は10月23日に二十四節気の「霜降(そうこう)」を迎えます。

「霜降」は太陽の通り道を15度ずつ24等分した18番目にあたります。

朝晩の冷気により露となった水分が地上で霜に降り始める頃で、文字通り「霜が降るころ」を意味する節季です。

次には立冬が控えていて、霜降は秋の最後を締めくくる節気ですね。

秋が深まるこの時期には紅葉(モミジ)や欅(ケヤキ)など、落葉樹の葉が鮮やかに色づき始め、

自然の多い場所では、どんぐりやイチョウの実の銀杏(ぎんなん)を見られる季節です。

では今回は霜降の時期に相当する、西洋占星術の「蠍座」について、考えてみようと思います。

蠍座:秋の持続と内的エネルギー加速の不動宮

霜降は太陽が黄経210に達した瞬間からの15日間で、西洋占星術における蠍座0度から前半までに相当します。

年の後半サイクルの始まりの天秤座(風・活動宮)は、昼と夜の長さが釣り合う秋分から始まる、調和を重視するために行き過ぎた自我は抑えることを知るサインでした。

そこに次ぐ蠍座は水の不動宮であり、その水は定着し表面上の動きは見えないもののエネルギー自体は内側へと向かいます。

沼で例えるなら地上からは計り知れない、覗き込んでも底まで見えない「隠されたものがある」内側の「奥深さ」という、深い感情や見えないものを象徴するサインです。

蠍座と牡羊座の支配星は火星ですが、火星が陽の火星であるのに対し、蠍座は陰の火星です。

「陽の火星」「陰の火星」という呼び方は西洋占星術の正式な言葉ではありません。筆者むぎまるの解りやすさから便宜上そう表現しているだけです。しっくりこないかたは牡羊座は男性星座・蠍座は女性星座と置き換えて読み進めてください。

属性は水ですが陰の火星である蠍座は、火星のエネルギーの矛先を内側に向けると考えることができ、そこから、

  • 裏側の真実や核心
  • 深層心理や内省
  • 底知れない感情
  • 秘めた情熱

というキーワードに繋がります。

火星は、チャレンジ精神や行動力、たたかう力のエネルギーを持ちます。

目標やゴールや戦いというものは大概外側に分かりやすく設定されがちなもので、外側に向かって突き進んでいく牡羊座に対して、

蠍座では何がしかの内側に向かうので、それが戦いのエネルギーで個人レベルであれば”自分自身との戦い”ということになります。

牡羊座は外なる戦いで、蠍座は内なる戦いなのです。

蠍座キーワード「死」については別記事を2本たてました。

蠍座0度は数秘「3」火星×木星のエネルギー

蠍座0度すなわち黄道210度は、数秘術で「3」の数に対応します。

数秘3は木星のエネルギーに関係し、拡大させ成長する力をもちます。

つまり蠍座の陰の火星のエネルギー、内側へ向く生命エネルギーが後押しされます。

晩秋が近づき冬の足音が聞こえ、自然界にとっての死の季節が始まるのが、この頃からです。

多くの植物は枯れてしまいますが、種を残します。

外側へ成長できなくなり枯れてしまった植物の火星のちから、生命エネルギーは、小さな小さな種の内側へ圧縮され集中しているのです。

また、落ち葉は土に還り、春に植物を豊かに育てる養分へと、元の植物としての姿かたちが無くなる変化を遂げていきます。

エネルギーの方向性が変わり、その質が変化する。これも変容と捉えてもよいかもしれません。

霜降周辺の活動・不動・柔軟および二十四節気は以下の流れです。

活動宮(カーディナル)⑨
秋分:天秤座0度

寒露:天秤座15度

不動宮(固定・フィクスド)③
霜降:蠍座0度

立冬:蠍座15度

柔軟宮(ミュータブル)⑥
小雪:射手座0度

大雪:射手座15度

蠍座は陰の火星であると先に述べました。

心理的には、ひとつ前の天秤座では「自他の調和とバランス」を意識するフェーズでしたが、

ここ蠍座では、天秤座で出会った1対1の人・もの・事への意識を引き継ぎ、その意識は拡大し強まっていきます。

それは柔軟サイン0度の黄経度数が数秘「3」で木星のエネルギーを含んでいるからです。

陰の火星である蠍座では対象の内側へその意識が集中し、秘められた真実や潜在的な力を探求する流れが強まります。

蠍座で金星がデトリメント│豊かさのカタチが変わる

金星は蠍座でデトリメント(障害)となり、ここは「金星本来の能力が発揮しにくい場所」とされます。

金星は本来、豊かさ・美しさ・楽しさ・調和を司る惑星で、牡牛座や天秤座をルールしています。

牡牛座は陰の金星であり「この世てきな恵み」「地上の豊かさ」を象徴するサインですが、

その180度反対側に位置する蠍座では「この世的な恵み」をそのまま享受しにくい場所ということです。

自然界的に見ても、蠍座の時期は秋の収穫は終わり、草木が枯れ始め、冬の死と再生への準備のフェーズへ突入する頃合いです。

このように、地上の豊かさが失われていく時期であり、牡牛座金星的な豊饒を地上に留めておくことが難しくなるのです。

そのままの状態で留めることが出来なくとも、果物や野菜はジャムやピクルスなど保存食を作ったり、お肉は燻製するなど保存に適したかたちに変えることができます。

そのままではなく、性質を変化させ(変容)、冬に備えて豊かさを保存するのです。

金星の象徴する果物や野菜やお肉などの美味しい物を、本来とは別のかたち、別の豊かさへと性質を変える(変容)て、腐らせたりダメにしたりせずに済むのです。

金星デトリメントと冥界下り

メソポタミア神話のイシュタル(シュメール神話ではイナンナ)の冥界下りの物語も、金星デトリメントのイメージと調和します。

女神イシュタルは愛と豊かさを司る女神ですが、冥界の七つの門をくぐり抜けるごとに、衣装や宝飾品をはぎ取られてゆき、最終的には裸になってしまいます。

冥界下りのストーリーは、死後の世界には「牡牛座の象徴する物質的豊かさ」を持ち込めないこと、

死と再生・変容の前には一旦、今まで持っていたものを全て手放す必要があると示唆しているようです。

牡牛座の象徴する物質的な豊かさは全て、生きているから享受でき扱える類のものです。

イシュタルの冥界下りの物語は、蠍座の世界観だなぁと思います。

蠍座シーズン周辺の伝承や習わし

太陽が黄経210度にたっする蠍座シーズンは、北半球では秋が深まり冬への移行を感じ始めるタイミングです。

収穫の最終段階・冬への準備・そして「死と再生」といった神秘的・精神的なテーマが反映されてた文化をピックアップします。

ハロウィーン(Halloween):アメリカ

キリスト教の万聖節(All Saints’ Day)と古代ケルトのサウィンの風習が融合して生まれました。

万聖節は殉教者ふくむ全ての聖人を記念する祝日で、その前夜がハロウィンとなり、その言葉は「All Hallows’ Evening(諸聖人の日の夕暮れ)」の略語だそうです。

現代のハロウィンでお菓子を配る風習は、中世において死者の魂を鎮めるために「ソウルケーキ」というお菓子を近隣の人々に配っていたことに由来します。

サウィン(Samhain):ケルト文化

ケルト暦の大晦日で、その年の収穫を締めくくる収穫祭であると同時に、先祖や神に感謝を捧げる大切な日です。

この日の夜にはこの世とあの世(仏教でいう彼岸と此岸)の境界が曖昧になるとされています。

祖先の霊が里帰りするためご馳走や供え物をしますが、同時に悪霊や悪魔も地上をさまようとされるタイミングです。

人々は人間だと気付かれないよう仮装をしたり、火を焚いたりして悪いものから身を守りました。

年8回ある魔女のサバトのひとつでもあります。

死者の日(Día de Muertos):メキシコ

毎年11月1日と2日にメキシコを中心に中南米で祝われる、亡くなった大切な人を敬う祝祭です。

祝祭の起源は数千年以上の昔にさかのぼり、死は終わりではなく人生のサイクルの一部と考えられ、この日は故人が現世に戻ってくるとされる日です。

家族は自宅に故人のために祭壇を飾り、故人の好きだった食べ物や飲み物、魂を導くとされるマリーゴールドの花を供えます。

パレードやパーティが行われる明るいお祭りです。

太陽蠍座シーズンの過ごし方アドバイス

収穫を終えた地上が冬へと変わっていく蠍座シーズンは、春夏の豊かさから大きな変化を迎えるタイミングと言えます。

朝晩の冷え込みや空気の乾燥も加速していき、外での活動から内なる活動へシフトしていくため、自己探求や深い洞察などと調和しやすいかもしれません。

  • 自己内省と問いかけ:蠍座の陰の火星は「核心を突く」ことに適したエネルギーです。「自分に本当に必要なものは何か?」を深く考え探求すると気づきが得られるかもしれません。
  • 変化のための手放し:新しいサイクルを迎えるには不要なものを手放すことから始まります。「本当に欲しい物のために手放すべきものや習慣は何か?」考えてみるのも意義深いと思います。
  • 瞑想や休息:自身の本当に望むものを知るには、ココロが穏やかでなければなりません。月がフォールとなる蠍座シーズンは意識して自分を癒せるよう、ゆったりと過ごす時間を持ちましょう。

陰の火星のちからが活発になる蠍座シーズンは、外向きの活動より内向きのエネルギーが活発になるタイミングです。

本来の目的に立ち返るための深い洞察や手放しを意識し行動することで、次の春に芽吹く成長の種を見つけることができるでしょう。

また、霜降は立冬の前の節季であるため「秋の土用」と重なります。

季節の変わり目で無理をしてしまうと、心身のバランスを崩してしまいかねません。

勢いにまかせるような頑張りではなく、上手くやりすごせる工夫ができるとよさそうです。

  • 本格的な冬支度:冬が近づき空気の乾燥や冷え込みが気になってきます。暖房器具の準備や布団など暖かく過ごす準備を整えましょう。
  • 適度に自分を甘やかす:内向きのエネルギーが過剰になりココロが落ち込んでしまう人もいるかもしれません。甘いお菓子や香り高いお茶などで適度に自分を甘やかせましょう。
  • 土いじりは土用前まで:土用期間に土いじりをすると神様が怒るといわれています。間日に行うか土用前までに済まし、土用期間はのんびり過ごせると良いかもしれません。

ハロウィンを意識したお菓子や秋のスイーツが多く店頭に並ぶ、この時期ならではの楽しみも満喫できるとよさそうですね。

まとめ

二十四節季「霜降」は朝晩の冷え込みが加速し、空気中の水分が霜となって降りる様子を表している節季です。

占星術的には蠍座シーズンの幕開けに相当し、太陽が黄経210度のその場所は数秘3に対応し木星のエネルギーとも関連します。

蠍座の支配星火星は数秘9であり、あたらしいサイクルを迎えるための終焉や完了という意味も含みます。

陰の火星のエネルギーが木星のエネルギーと結びつくため、内向きで深い変容と成長を促すとも考えられそうですね。

自然界は秋のエネルギーが加速し、春夏では外側に向かっていた生命エネルギーが、土の中や種の中、内側へと向きを変える変容のタイミング。

土用期間とも重なるので無理せず、豊かさを内側に置き、リラックスして過ごし、

「本当に望むものはなにか?」

考えてみるのも良い機会かもしれません。

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