水の活動宮 蟹座:後編│二十四節気「小暑」

二十四節気の「小暑(しょうしょ)」は夏至点から15度進んだ位置、すなわち黄経105度(蟹座15度)に太陽が到達してからの15日間にあたります。
年によってズレることがありますが、大体7月7日前後からで、2025年も7月7日からの15日間ですね。
日本では南の地方から梅雨前線が北上し抜けていく梅雨後半戦にあたり、いよいよ本格的な暑い時期を予感させていきます。
温暖化の影響もあって字のごとく「暑さが小さく始まる」という意味はしっくりこないかもしれませんが、
夏至で陽の極みを迎えはしたものの、この頃はまだ“暑さの極み”には達していないため「小暑」と名付けられました。
ですが実際には小暑の頃から非常に蒸し暑いため、二十四節気が発祥した古代中国でも「小暑大暑、連蒸袋煮(小暑・大暑はまるで蒸し煮のような暑さ)」という言葉が残されているそうです。
日本ではこの頃から、梅雨明けを知らせる蝉が鳴き始め、夏野菜が美味しい時期になり、人によっては暑中見舞いを送る準備に取り掛かる時期でもあります
では、二十四節気「小暑」を迎える今、蟹座考察の後編を綴っていこうと思います。
蟹座と月の育成エネルギー
二十四節気「小暑」を迎える瞬間は、トロピカル方式で黄経105度、すなわち蟹座15度に太陽が位置します。
蟹座は水の活動宮に分類されるサインで、初夏からグラデーションで始まっていた夏が、いよいよ本番に至ったことを告げるサインです。
小暑の15度前の夏至(蟹座0度)は日照時間が最も長く陽が極まるポイントであり、そこでは陽から陰へ、外側から内側へとエネルギーの方向転換がありました。
今まで外側へ向かっていたエネルギーが、転じて内側の成熟に使われるため、秘めた感情や記憶を起点にして、内面を整えていく働きかけをします。
蟹座支配星である月は、
- 感情・本能・無意識の癖・反射
- 習慣性・依存性・時間による変化
- 保護・育成・母性
のような、オフィシャルよりもプライベートな事柄に関連した、外的よりも内的なキーワードを持ち、熱冷乾湿でコールド&モイストな惑星です。
植物で例えるならば、これまで枝葉や花など外側の成長へ向けていたエネルギーが、実を為すために内側へと向かうイメージです。これは月の持つ育みのエネルギーにも繋がります。
実際、露地栽培で夏野菜の収穫が始まるのも、おおよそ蟹座シーズンからとなります。
蟹座で土星がデトリメント
古典の占星術では、土星は山羊座と水瓶座の支配星であり、蟹座とはオポジションに位置します。
そのため土星は蟹座でデトリメント(障害)とされますが、熱冷乾湿で土星は冷たく乾いたコールド&ドライな性質を持つ星であるのに対し、
蟹座を支配する月は冷たく湿ったコールド&モイストな性質とされ、両者とも「コールド」です。
コールド同士で調和するかと思いきや、これだと冷えすぎてしまい、月の支配する蟹座の育み守るチカラが機能不全になるのだろうと思います。
別の角度で考えるなら、土星の厳しさや乾きや実質的な様が、月の支配する蟹座のしっとりした育む力や感情の流れを妨げ、制限し打ち消すイメージです。
このため、土星が蟹座にあると感情表現や育みの流れが抑えられ、心が硬くなり心身の不調を感じやすいかもしれません。
土星は、
- 時間・制限・試練・熟成
- 闇・老化・忍耐・枯渇
- 境界・時の限界・終わり・死
などを司る天体です。
本来はしっとりと包み込むような蟹座の性質が、土星の影響で「ドライで厳格」になってしまい、
家族への気持ちや自分の感情を上手く表せなかったり、責任感やプレッシャーで消耗しがちになるとも解釈できます。
簡単に言えば、蟹座の土星は“自分にも子供にも厳しい母親”のように、必要以上に自分の気持ちを抑えて、頑固になりやすい配置といえます。
カルディアンオーダーで見ると、月は地球に最も近く、土星は最も遠い惑星です。この配置が示すように、両者は逆のエネルギーを持ちます。
仲間や感情や肉体を守り育むために、蟹座ルーラーである月は無条件に働くのに対し、土星は距離と冷静さをもってルールや制限をもたらします。
山羊座ルーラーである土星が何らかを守るというとき、そのルールや制限や仕組みの範囲内で守ります。無条件に守る月とは対照的であり、調和しにくいのです。
蟹座で木星がエグザルテーション(高揚)
一方で、木星は蟹座でエグザルテーション(高揚)します。
木星は、
- ホット&モイスト(温・湿)
- 拡大・発展・成長
- 恩恵・おおらかさ
を象徴し、熱は外側へ広がり湿は繋がりを作っていきます。
そのため蟹座に木星が入ると、しっとり感のある蟹座(月)に、温もりと拡大の力が加わります。
モイストの部分が共通しているので、植物に快適な温かい環境と水をたっぷり与えるような、守り育てたい想いを木星のエネルギーがサポートし、すくすくと大きくなっていくイメージです。
木星は、拡大発展・成長・豊かさを象徴する惑星ですから、蟹座では仲間を大切にしたり慈愛や育成、
感情や情緒など内側を育むチカラを発展させ膨らませ、社会という外側にまで共有していく働きをします。
それは子供の教育はもちろん、ココロを豊かにする文化的な活動の発展も含まれます。
蟹座は守るべき大切なものが何であるか気付いていて、それを育む方法も本能的に知っているので、
拡大・発展・成長の星である木星は、蟹座でこそ最大限にポジティブな影響を発揮できるのだと思います。
木星は蟹座の優しさに活力を与え豊かにし、周りとつながりながら愛を広げる後押しをしてくれるわけです。
これは、家庭の中で育まれた愛情が、やがて社会の中で発揮されていくような流れとも、捉えることができそうです。
蟹座で火星がフォール(減衰)
火星は、山羊座でエグザルテーション(高揚)し、オポジション関係の蟹座ではフォール(減衰)となります。
フォールは、サインの性質と惑星の性質が不調和な状態になるため惑星のチカラが最も発揮できない状態、です。
熱冷乾湿では、
- 熱く乾いた火星(ホット&ドライ)
- 冷たく湿った蟹座(コールド&モイスト)
つまり火星と蟹座は、真逆な性質です。
このような熱冷乾湿の嚙み合わなさが、火星のチカラを弱めてしまいます。
火星は、戦いや活力や外側へ向けての行動力を象徴する惑星であるのに対し、一方、蟹座は、ココロ・保護・育成など内向きな守り育てるエネルギーのサインです。
また、蟹座は夏至(成長の極みで転換点)のサインであり、山羊座は冬至(光が再び始まる転換点)のサインであることからも、
火星がイグザルテーション(高揚)する山羊座では「困難な登り坂に挑戦し高みへ行きたいエネルギー」であるならば、
蟹座では「ここから先は光が陰り衰えていくフェーズ」となるために、蟹座では火星の意志のチカラや行動力が上手く発揮されにくくなります。
結果として、蟹座の守り慈しみ集団の繋がりを大切にしたい感情は、火星の直接的な行動力や意思のチカラと衝突してしまい、
この感情的なトラブルは、家庭内や個人的な関係の範囲において表面化する傾向があります。
受動的な攻撃性、守るために戦う、溜め込んでしまった怒りで感情が大爆発する、などです。
まとめ
二十四節気の「小暑」は、梅雨明けが近づく暑さの始まりです。
西洋占星術では蟹座15度に太陽が達する、蟹座の質やテーマが最も高まるタイミングとなります。
ひとつ前の夏至で陽が極まり夏本番に至りましたが、体感的な暑さの本番は、小暑以降です。
土星がデトリメントになる蟹座シーズンは、冷たく乾いた厳しさや制限は無く、代わりに木星の温かく広がり繋がっていくチカラで、
家庭的な安心感や情緒を育んでいくことが、自分とその周囲を癒すことに繋がっていきます。
暑さや雨で屋外活動を控えがちになる小暑の時期、おうちの中や日常に小さな「育み」を意識することが、次なる季節への内なる準備になるかもしれません。
暑さ厳しくなる季節ですが、しなやかな心で夏を乗り切りたいものですね。