占星術で読む二十四節気「穀雨」牡牛座と月が育む自然界の潤い

二十四節気は、太陽の黄道上の動きを15度ずつ24等分して季節の移り変わりを表す、古代中国に由来を持つ暦です。
4月20日に迎える「穀雨(こくう)」からの15日間は、その名のとおり「穀物を潤す春の雨」の意味を持ちます。
この時期に小雨が続くことを「春霖(しゅんりん)」といい、別名では「菜種梅雨」と呼ばれます。
春の雨は田畑を潤し、芽吹いた作物を成長させる大切な恵みです。「穀雨」は二十四節気においては春の最後の節季でもあり、この後は初夏の「立夏」へと続いていきます。
「穀雨」は西洋占星術でいうところの太陽が黄経30度、すなわち牡牛座0度に入った瞬間に該当します。
春分(牡羊座0度)から始まった新しいサイクルの第一段階が完了し、ここから「安定」と「成熟」を担う牡牛座の季節へ移行していくのが「穀雨」です。
では今回も、占星術の視点から二十四節気の「穀雨」について深く考えてみましょう。
牡牛座:春の持続とエネルギー安定化の不動宮
二十四節気で穀雨は春の最後の節季ですが、西洋占星術において牡牛座は春の真ん中のサインです。
穀雨に太陽が入る牡牛座は不動宮(フィクスドサイン)に分類され、四元素では地のエレメントに属します。
ひとつ前の牡羊座(活動宮・火)では、純粋なエネルギーの芽吹きや行動の開始が強調されていましたが、
牡牛座に入ると、その初動のエネルギーを地に根づかせ、成長を安定化し、形として確立していく段階に入ります。
牡牛座と天秤座の支配星は金星であり、天秤座が陽の金星であるのに対し、牡牛座の金星は陰の金星です。
陰の金星である牡牛座は、金星の恵みを内側に取り込むと考えることができ、そこから「五感を満たすもの」「衣食住」「所有」「芸術作品」「自分を支えるもの」というキーワドに繋がります。
牡牛座は地のエレメントなので冷たく乾いた性質であり、金星は冷たく湿った性質を持つ天体です。
- 牡牛座(コールド&ドライ)
- 金星(コールド&ウェット)
穀雨の名が示すように、この時期の雨は乾いた大地に潤いをもたらし、芽吹いた植物や穀物が成長を維持するための支えとなります。
上述した牡牛座のキーワドのひとつに「自分を支えるもの」がありますが、
- 牡羊座
純粋な始まりのエネルギー
芽吹いた植物
これを支えるのが
- 牡牛座
持続安定のエネルギー
金星の潤い
田植えで考えると、分かりやすいかもしれませんね。乾いた土を水で潤し、そこに苗を植え、すくすくと成長してく安心感や安定感のイメージです。
地域によってズレはあるものの、二十四節気の穀雨は田植えの準備を始める目安となっているそうです。
人間に置き換えてみると?
人間の生活においても、サイン牡羊での始まりのエネルギーがひと段落し、外向きのエネルギーからの転換、内的な充実感や快適さに意識が向かいやすくなると考えられます。
牡羊座シーズンで始まった新生活や新年度の緊張感やストレスが、この時期に、体調に出てしまったり頑張る気力が枯渇してしまう状態を、五月病といいます。
頑張ることと休息を取ること、この両輪のバランスは重要ですよね。
つまり、火星の挑戦や頑張りのエネルギーを支えているのは、金星の持つ癒しのちからなのです。
金星の癒し・支え・ご褒美があってこそ、頑張りや挑戦のエネルギーが枯渇せずに持続でき、人は安定して何かを継続することが出来るのだと思います。
牡牛座0度は数秘「3」金星×木星のエネルギー
牡牛座0度すなわち黄経30度は、数秘術で「3」の数に対応します。
数秘3は「木星」のエネルギーと関連し、拡大・発展・希望・誠実さ・寛容さ、といったキーワードを持ちます。
つまり、地の不動宮の0度である「牡牛座0度=穀雨」が、支配星の金星だけでなく木星のエネルギーも関係することの意味は、
豊かさが現実世界に根を張って拡大していくプロセスを、示唆していると感じられるのです。
しかし牡牛座は地の不動宮であるため、火の活動宮の牡羊座のような急進的な勢いはないのですよね。
なのですが、牡羊座から始まったエネルギーを、牡牛座は持続させていくことができます。
つまり、エネルギーの持続という努力の継続や忍耐を通じ、長期目線で「実を結ぶ」力に優れているということに繋がります。
特にこの時期、自然界では植物の葉が一斉に繁り、成長が加速していきます。果物の樹は4~5月に花を咲かす種類が多かったりします。
果物は金星です。花が落ち実が食べられるようになる迄ある程度の時間を要します。長期目線ですね。
さて、
穀雨周辺の活動・不動・柔軟および二十四節気は以下の流れです。
清明:牡羊座15度
立夏:牡牛座15度
芒種:双子座15度
牡牛座の支配星は陰の金星であると、先に述べました。
ひとつ前の牡羊座火星のエネルギーの外的な突破力や指向性に対し、牡牛金星は物質的豊かさ・五感で感じるもの・美しいと感じるものを内側に取り込もうとします。
そこに数秘3(木星)の拡大発展のちからが合わさることで、自然界も個々の人間も、内なる豊かさや美、快適さへと関心が広がっていくタイミングと考えることができます。
金星と木星はどちらも「ベネフィック(吉星)」に分類されます。
この二つの吉星が牡牛座0度「穀雨」に関わりがあることは、地上の物質的豊かさが広がる兆しとタイミングであると、捉えることができます。
月がイグザルテーション(高揚)する理由
月は牡牛座でエグザルテーション(高揚)となり、これは「月が最もその性質をのびのびと発揮できる場所」という意味を持ちます。
月は、感情・母性・育てる・保護する・無意識・生と死の循環 などの象意を持ち、自然界では潮の満ち引きなどの周期性に影響を与える存在です。
古代の人々は、天体の動き=自然の変化として捉えていました。
潮の満ち引きの動きは漁業に影響し、月の満ち欠けのサイクルで種まきや収穫のタイミングを決める農法も、古くから行われています。
太陽が黄経30度、牡牛座初期度数(穀雨)は、農作物が芽吹き育つ準備が整う頃、まさに自然界が「豊かさを育て始める」季節です。
占星術で考えると
- 月(コールド&モイスト)
- 牡牛座(コールド&ドライ)
- 支配星金星(コールド&モイスト)
冷たく湿った性質を持つ月と金星、冷たく乾いた地のエレメントの牡牛座。
少し話は脱線しますが、
- 熱(ホット)
- 冷(コールド)
- 乾(ドライ)
- 湿(モイスト)
この4つの性質のうち、乾と湿は熱と冷から派生したものなので、熱と冷の部分が同じであれば、調和できるんですね。
この「冷」の共通点と、月の「湿」が牡牛座の乾いた土を柔らかくし、金星的な穏やかで快適な調和した成長環境が作りだされると、象徴的に考えることができます。
つまり、月が豊かさの成長をサポートする「母なるエネルギー」として最も機能し、命がのびのびと育って満ちていくのが牡牛座であり、二十四節気の穀雨の頃なのです。
穀雨(牡牛座0度)周辺の伝承や習わし
太陽が黄経30度、牡牛座0度から始まる穀雨の頃のは、春から初夏の入り口に向かう節目としての文化・伝統行事が見られます。
日本:八十八夜
立春から88日目、穀雨の8日後にあたります。新茶の時期です。
♪夏もちーかづく、はーちじゅうはちやー、野にもやーまにも…♪の歌で聞いたことがある人も多いと思います。
この頃に摘まれた新茶は「無病息災」とされ、特に縁起が良いとされます。
日本:端午の節句
こどもの日(5月5日)は、二十四節気の穀雨の時期にあります。
端午の節句は男の子の健やかな成長を願う行事であり、最近は見かけなくなりましたが鯉のぼりを飾ったり、鎧兜を飾ったりします。
縁起の良い食べ物では柏餅が有名です。柏の葉は「子孫繫栄」の意味が込められています。
ヨーロッパ:ベルテーン(Beltaine)
古代ケルト文化に起源をもつ、アイルランドやスコットランドの火祭です。
春分と夏至の真ん中あたりの頃、伝統的には5月1日に行われ、夏の始まりを祝います。
穀雨の次が「立夏」であることから、季節の節目を重視するのは東洋も西洋も同じものがあると感じられます。
穀雨(太陽牡牛座入り)の頃の開運行動
ゴールデンウィークの具体的な計画を立てる人が増えるタイミングですね。
行楽の予定や帰省、ちょっとした旅先選びに心を弾ませる人も多いでしょう。
おすすめなのは、自然とのふれあいや、身体を喜ばせる活動です。
- おいしいものを味わう
- 温泉でくつろぐ
- 美しい景色を楽しむ
- 自然を感じる
など「五感を使った豊かさの享受」が心の安定と幸運を引き寄せます。
一方で、穀雨は立夏の前の節季であるため「春の土用」と重なります。
この頃は、社会的な新年度の緊張がゆるんで疲れが表面化し、5月病てきな不調も現れやすいタイミングでもあります。
なんだかスッキリしないと感じる場合は、無理な計画やペースを自分に強いるのではなく、牡牛座支配星としての金星的な価値観、
- 自分が心地よく過ごせること
- ゆったり自分を満たすこと
- インナービューティー
を重視してみるのも良いかもしれません。
身体を整える、美味しいものを食べる、美しいものに触れる、自然と戯れる。
急がずゆっくり、じっくり楽しむことがポイントです。
そうした「五感」に意識を向けることで、心身ともにリズムが整い、次のフェーズへ無理なく自然に乗っていけるようになると思います。
まとめ
穀雨は、自然界にとっても人間にとっても、春のエネルギーが安定し、豊かさへと形を変えていく大切な節季です。
牡牛座0度(黄道30度)という地点に太陽が入るこのタイミングは、牡羊座の火星によって始められた動きが、牡牛座において定着し、着実に育っていく段階です。
黄道30度は数秘術で「3」の数に対応していて「3」は木星のエネルギーに関連します。
支配星金星と木星という、二つのベネフィックなエネルギーが交錯し、地上の豊かさが拡大していく、と考えることも可能です。
気候に恵まれやすい時期ですし、火星的な「前進」「競争」「緊張感」から一度離れ、ゆるりと金星的な「楽しむ」「味わう」姿勢を大切にしてみましょう。
日々の中で、小さな豊かさを見つけ、受け取り、それに感謝する。
きっと、この積み重ねこそが、次の成長の糧となっていきます。