風の柔軟宮 双子座:後編│二十四節気「芒種」

今年2025年は6月5日は、二十四節気の「芒種(ぼうしゅ)」を迎えます。
芒(のぎ)とは、稲や麦などイネ科植物の種の先端にある針のような突起のことをであり、「芒のある穀物の種をまく頃」という意味です。
現代では気候の変化や技術進化などにより、すでに田植えを終えている地域もありますが、
古代中国の農暦を起源とするこの節気は、農耕文化に根ざした季節の大切な指標といえるでしょう。
関東ではおおよそこの頃に梅雨入りとなります。自然界は紫陽花が咲き、湿度が高く雨が降る日が続きます。
この梅雨の合間に見える晴天を、この時期が陰暦では5月にあたることから「五月晴れ」というのです。
では、二十四節気の「芒種」にあたる時期、西洋占星術の双子座について考察してみましょう。
↓双子座考察:前編はこちら
二十四節気「芒種」西洋占星術では?
芒種は、西洋占星術のトロピカル方式では黄道75度、すなわち双子座の15度に太陽が到達した瞬間から始まります。
西洋占星術においては双子座16度から30度までの期間が二十四節気の「芒種」に相当し、春の終わりから夏の入り口へと移行する、流動的な動きのある変化の時期です。
双子座は風のエレメントに属し、柔軟宮(ミュータブル)のサインです。
柔軟宮とは物事の終わりを示すサインであり、また、新しい始まりへ移行するための調整を得意とする性質を持ちます。
季節の変化でいうと、双子座は春から夏への橋渡しを担っている柔軟宮です。
梅雨のはっきりしない曇天が続いていて春と夏の境目も分かりにくく、梅雨前線が徐々に北上して抜けていくように、少しづつグラデーションで季節を移ろわせていきます。
生活面においては、いつ雨が降るのか気温や湿度はどうなのか、傘を持っていくか靴はどうしようか等、臨機応変に服装や持ち物を変える必要性が増える時期です。
柔軟宮のディグイニティに、臨機応変な適応力をもち性別格が中性の水星が配置されていることは、とても興味く思います。
15度「芒種」に極まる双子座の質
中世アラビアの占星術では、各サインの15度がその星座の影響力のピーク地点であるとされていたそうです。
その観点から見ると、双子座15度は双子座というサインの本質が最も強く発揮される位置となります。
双子座の支配星は水星です。乙女座の水星を「陰の水星」とするなら、双子座の水星は「陽の水星」です。
各星座は性別が割り当てられているように、惑星にも性別が割り当てられています。
水星自体の性別格は中性で、太陽との位置関係によっても性質が陽にも陰にも転じる柔軟さがあります。
どちらの水星も、小さく・バリエーションや多様性に富み・細分化したり・性質が変化する・賢さという共通点がありますが、
双子座の水星は、陽なので外側に働きかけ、言葉やコミュニケーション、好奇心、一般的で日常的な学び、近距離移動、物流や商業などを司るため「使者」や「メッセンジャー」と表されたりします。
また、水星のもつ”性質の変化”というのは、月が示す時間と関係する変化とは異なり、外国語を通訳するようなイメージです。そのため「翻訳者」を表すこともあります。
つまり、状況に対応するために根本的な部分を変化させること、それが水星の示す変化です。
季節で例えるならば、春から夏への移り行く変化は、誰にも止めることはできません。
止められない環境の変化に順応するために、衣替えや寝具を変えるなど夏の支度をして、暮らしの根本を見直し変化させる時期とも言えます。
水星に木星が混じる頃│数秘3と双子座15度
サインの性質が極まる真ん中、双子座15度(黄道75度)は数秘術で「3」であり、木星のエネルギーに関連するポイントです。
そして、各星座の16~20度は対向サインの影響が流れ込む場所という考えがあり、ここではオポジションの射手座の性質が流れ込みます。つまり陽の水星に陽の木星が混じる頃。
木星は、拡大発展・豊かさ・精神性・崇高さ・おおらかさを象徴するため、陽の水星の知性や好奇心が、陽の木星の拡張性によって後押しされると読むことができます。
双子座は、外側に働きかける知性や交流や移動、一般的でバラエティに富んだもの、臨機応変な変化を表します。
15度という転換点から強まる木星の影響は、それらが一層活性化し、表面的ではあるものの鮮やかに拡張されていく。流れるような変化の加速のフェーズです。
ですが、双子座は柔軟サインのため、ここでの変化は何かを始めるよりも次のフェーズに向かうため、総括を共有するのに向いています。
大きな企業は3月決算のところが多いそうですが、その場合、ちょうど第1四半期の最後にあたるのも、なるほどと思います。
双子座は木星がデトリメント(障害)
トランスサタニアンを含まない古典占星術では、木星は射手座と魚座の両方を支配しています。射手座は秋の柔軟宮で、魚座は冬の柔軟宮です。
春の柔軟宮である双子座の支配星は、知性と交流の星の水星ですが、木星も知性を表します。
オポジション関係にある、双子座ー射手座ラインは知性と交流の軸ですが、方向性が異なるんですね。
ふわっとした表現をするなら、
- 天上の知性=射手座
- 地上の知性=双子座
であり、
- 高度で専門性のある
難しい知識や哲学=射手座
これを専門知識のない人も扱えるように細分化し日常に落としたものが、
- 一般でも扱いやすい
生活の知恵や雑学=双子座
このように”知性”という言葉で括れる同士ても、方向性が異なります。
壮大で崇高な知性や哲学を広げていきたい木星は、双子座では細分化や断片化して外に小出しにされ、元の形を保てなくなってしまうので居心地が悪く、デトリメントになります。
天体の熱冷乾湿で考えるなら、
- 水星(コールド&ドライ)
- 木星(ホット&モイスト)
熱冷も乾湿も全て異なり調和しません。
サインでは双子座はホット&モイストなので、同じくホット&モイストな木星と調和していますが、
これについて、筆者むぎまるは上手く文章化できず申し訳ないのですが、過ぎたるは及ばざるが如しな状態になってしまう為だと、考えています。
熱はどんどん上昇し、水分はいろいろなものをくっ付け、上にも横にも拡大していきます。それが過剰。
バリエーションや多様性が豊かになりすぎて、何でもありな状態というか、手を広げすぎて忙しなく、雑多な状態と言いますか。
木星が双子座にあることで、
- 情報が増えすぎて本質を見失いやすい
- 興味が拡散し深みや一貫性に欠ける
といった傾向が出てしまうんですね。
双子座は、誰でも扱う事の出来る小さな知恵を集め、軽やかに多様な視点を渡り歩く柔軟なサインです。
射手座がアカデミックな論文なら、双子座は本屋に並ぶ雑誌です。
射手座が大きく厚みのある紙の本なら、双子座は片手で読めるスマホの電子書籍です。
芒種(双子座15度)周辺のサビアンシンボル
モダン占星術では、双子座の16~20度は対向サインである射手座の影響が流れ込む度数域とされ、両者のエネルギーが交錯します。
双子座も射手座も柔軟宮で三区分は同じですが、双子座は風サインのため知性や情報の軽量化が見られる一方、
中盤度数域では射手座支配星木星の拡張性が加わることで、バリエーションや選択肢が多すぎる状況に翻弄されてしまい、思考の柔軟さが一層必要になると考えられます。
芒種周辺のサビアンシンボルは以下の流れです。
まるで双子座のシンボルのような2人の子供の描写。スピード感のある言葉のキャッチボールを楽しめる頭の回転の早さ。軽く浅いコミュニケーションを楽しむ。好奇心は広がり人との関わりも積極的。双子座の性質が高まるところ。
ここから対向サインの射手座の影響が。15度では目の前の相手に対して自分の話したいことを話していただけですが、視野を広げ、もっと広い世界に自分の考えを届けたくなる。影響力を高めたい。扇動。マシンガントークかもしれない。
視野の広がりで選択肢が増えすぎてしまい、自分の考えが分からなくなったり、人の考えに大きく影響されたり。その多大な選択肢の中に重要なものがあるかもしれないので、俯瞰してみるようにする。大人びたことを言う子供。16度の女性に洗脳された側。
舞台はアメリカのチャイナタウン。多様性や外部からの強い影響により、自分がなくなるような変化を目の当たりにした人が、内輪で閉じた関係の仲間と密に関わる様。仲良しグループ。17度の反動で内側に籠る度数。
大きな古典書物は射手座の智慧。16度から射手座の影響を受けてきた知恵ある双子座は、数多あるバリエーションの根源的なルーツに関心が向かいます。たくさんの情報から揺るがない深い智慧に裏付けされたものを見抜く、目利きの能力。
大きな古典書物との出会いを経て落ち着きを取り戻す。行き過ぎた多様性と数多のバリエーションに翻弄されずに取捨選択できる様は、メニューの多いカフェで迷わず注文する人のよう。興味のあるなしに関わらず広くいろいろな情報やコミュニケーションを扱うことができる。話題に困らない博識さ。
芒種(双子座15度)周辺の文化や伝統
西洋占星術では夏の始まりの基点は夏至です。その手前の芒種(双子座15度)は春から夏本番へ向けての調整の2週間になります。
夏至が近いため昼間の時間の長さを実感しやすく、日本を含め世界では以下のような文化や伝承がみられます。
時の記念日(日本)6月10日
671年に天智天皇が漏刻(=水時計)による時の制度を導入し、鐘鼓を打って時報を開始されました。
そのことを記念し1920年に制定された日本の記念日です。時間を大切にする意識を育むことが目的です。
ペンテコステ(聖霊降臨祭、キリスト教圏)
6月上旬~夏至前の期間に行われることが多いものの、基本的は復活祭から50日目の日曜日の祝祭です。
イエス・キリストの使徒たちに聖霊が降臨したことを記念するキリスト教の重要な祝祭です。
教会の誕生を祝う日とされ、各国で様々な祝い方がされます。
夏至祭の準備
芒種は夏至のひとつ前の節季です。
1年のうち最も昼間の時間が長くなる、夏至を祝う文化は世界各地で見られるため、この時期は祝祭や祈願の準備を進めるタイミングと重なります。
芒種(双子座15度)の開運行動
芒種の時期(6月5日頃~夏至前)は、梅雨入りする地域も増え、蒸し暑さを感じ始める頃です。
湿気が多くなる季節ですので、身体のむくみやだるさなど体内の水分バランスや、呼吸器系のトラブルに注意したいところ。
開運行動は以下のアクションです。
- 除湿や換気でカビ対策
- 睡眠環境を整える
- 軽い運動やハーブティー
- 迷ったら優先順位をつける
窓を開けにくい天気の日も増えますが、室内は除湿や換気を心がけ、カビの発生を防ぎましょう。
寝具も通気性の良いものに替えるなど、快適な睡眠環境を整えることが、健やかな暮らしには大切です。
雨の季節ですが、晴れ間にはアジサイなどこの時期ならではの花や自然を探して散歩したり、軽い運動や深呼吸、ハーブティーなどで気分を整えるのも素敵だと思います。
また、
占星術的な心理側面は、あれやこれやと頭が忙しくなりやすいかもしれません。
好奇心が刺激され学びたいことが増えたり、人とのやりとりが増えたりすることが予想されます。
そのため、意識的に「整理整頓」や「優先順位」をつけることが大切になってきます。
まとめ
二十四節気の「芒種」は、麦や稲など芒のある植物の「種をまく時期」を表す節季です。
日本では梅雨入りする地域が多く、雨と湿気の対策が健やかさの維持に大切になってきます。
占星術的には太陽が双子座15度(黄経75度)に入ることで、南中高度が上がり日照時間が延び、梅雨の合間に夏を垣間みることができる季節です。
心理的な側面においては、対向サインの射手座木星の影響が強まる双子座の中盤度数では、選択肢が多すぎて本当に必要な”知識の種”が見えにくくなる恐れがあります。
何らかの場面で迷いが生じたときはあえて情報を絞り、深める対象を選び取ることが大切です。
また、
表面的な新しい知識だけでなく、それらの根源的な「叡智」や「ルーツ」にも意識を向けてみること、
例えば、当たり前に疑わなかった生活の中の○○の知恵はどこから来たのか?と先人の残した知識を深めてみる。
そういった知的活動も、芒種という季節を豊かに過ごすヒントになるかもしれません。