光が折り返す。水の活動宮:蟹座①│二十四節気「夏至」

冬至分から執筆し始めた、二十四節気と12星座のシリーズ記事、ようやく夏至です。折り返しですね。
思考整理のための軽い気持ちで始めてしまったものの、水星の品位が良くない私むぎまるは、事の壮大さに些か参っております(‘Д’;)苦笑
さて、
2025年は6月21日に夏至を迎えます。
夏至は北半球では昼間の時間が最も長くなる「陽」が極まる瞬間です。
日本では梅雨の真っ只中であり、空は曇りがち湿度も高く、体感としての「夏らしさ」はまだ薄いかもしれませんが、
太陽の南中高度が1年で最も高く、太陽の影響力が日照時間のピークとして現れるのが夏至であり、夏至を過ぎると夜の時間が少しずつ長くなっていきます。
夏至は1年を24に分けた中でも、冬至と対になる自然界の大きな転換点のひとつ。植物は命のサイクルを次の段階へと移ろわせていくタイミングです。
では占星術の視点から、夏至と蟹座について考察していきましょう。
西洋占星術における夏至
夏至は二十四節気の二至二分のうち、陽の気が極まり陰に転じ始める象徴的な転換のタイミングです。
この日は夏の暑さのピークというよりも、表層的な成長がひと段落し「内側の成熟」へと向かう節目となります。
この「内側の成熟」を植物で表すならば、花が終わった後に実をつける為のエネルギーの変容に例えられると思います。
西洋占星術では、トロピカル方式で黄経90度(蟹座0度)に太陽が達した瞬間から、15日間が二十四節気の「夏至」にあたります。
つまり、太陽が蟹座に入る瞬間が夏至であり、春分の牡羊座0度から始まった太陽の旅は、牡牛座・双子座を経て蟹座の門をくぐり、夏の本番へと至ります。
夏至周辺の活動・不動・柔軟および二十四節気は以下の流れです。
芒種:双子座15度
小暑:蟹座15度
立秋:獅子座15度
蟹座は活動宮(カーディナル)に属し、新しいことを開始するチカラを持つサインです。
エレメントは水であり支配星は月です。
感情や無意識、家族や日常の居場所、守り慈しむことなど「内側」に関連付けられる蟹座は、
双子座で外の世界に向かっていた意識が、ここでは内側へと向きを変えていくのです。
蟹座の支配星の月と数秘「9」
黄経90度にあたる蟹座0度は、数秘術では「9」に対応しています。
「9」は火星のエネルギーと関連した数字で、これまでの全てを総括したあとで、新しい始まりに向かうための「能動的な変化の力」を象徴します。
夏至における「9」のエネルギーは春の完結と夏本番の始まりを示すと同時に「陽の極まり」から「陰の始まり」への切り替えを示していると言えそうです。
蟹座支配星である月のキーワードは、
- 感情・本能・無意識の癖・反射
- 習慣性・依存性・時間による変化
- 保護・育成・母性
と、個人的であり外的より内的なものです。
ひとつ前の双子座で好奇心のまま外側へ動き回っていたエネルギーが、蟹座では内なるものへと切り替わります。
それは、夏至のもつ「陽から陰に転ずる」意味と通じているとも思えますね。
蟹座の支配星が太陽ではなく月なのは何故
どうして月なんだろう?
そう思いませんか?私は不思議に思ったことがありました。
占星術の熱冷乾湿で、月はコールド&モイスト(冷湿)な天体です。熱のホットは陽であり、冷のコールドは陰になります。
しかし、夏至は太陽が最も高くのぼり昼が一番長くなる日なので「だったら太陽が支配星でもいいのでは?」と思いますが、占星術で蟹座の支配星は「月」です。
おそらく、その理由は夏至が「陽の極まり」であると同時に「陰への折り返し」であるからではないかと思います。
月は満ち欠けを繰り返し、時間の流れを静かに刻み、常に変化し続ける存在です。
新月から光が増えて満月へ向かい、光の極まりと同時に転じ、次の新月へと循環していく____
月のサイクルは生き物のリズムであるように、時間と共に変化する私たちの感情や体調、はては記憶にまで日常的に寄り添います。
日蝕を除きカタチを変えない太陽が普遍の存在で永遠性を象徴するならば、月は、移ろいの中にある循環性を表します。
夏至の「陽が満ちたと同時に始まる陰への変化」を「日常レベルに落とし込んだ縮図的存在が月」であり、
月が支配する蟹座こそが、日常的に無意識に扱っている感情や生活レベルでの養育など、変化するものを守り育むテーマと関連しているのです。
月と土星:夏至と冬至
古典占星術で用いられるカルディアンオーダーという惑星の序列は、地球に近い順から「月 → 水星 → 金星 → 太陽 → 火星 → 木星 → 土星」と並びます。
この並びを蟹座と山羊座に当てはめてみると、興味深い対称性が見られるのです。
- 蟹座(夏至)支配星:月(最も近い)
- 山羊座(冬至)支配星:土星(最も遠い)
夏至は、陽が最も強くなる瞬間でありながら、陰への折り返しが始まる転換点。
だからこそ、周期的な変化を象徴する月が支配星としてふさわしいとされるのです。
一方で冬至の山羊座は陰の極みで日照時間が最も短い、太陽の力が最も弱まった冷たく乾いた季節で
山羊座水瓶座シーズンは自然界が死の静寂に包まれるため、最も冷たい乾いた土星が司っています。
土星は「終わり」「境界」「時間の限界=死」を象徴し、まさに新たなサイクルの始まりを前にした準備期間として、物事の停止や活動の制限を司ります。
この両者の配置には「陰陽の反転」「循環の起点・転換点・終点」の普遍性が宿っているようです。
蟹座と山羊座は「集団と守護の軸」
陰と陽でありオポジション関係にある蟹座と山羊座は、
- 蟹座 月 陰
家族・プライベート・居場所・仲間・守る - 山羊座 陰の土星
社会・オフィシャル・仕組み・ルール・守る
正反対のキーワードのように見えて、どちらも集団に属しているという意味で共通しています。
プライベートな蟹座では仲間だと認められている限り守護され、山羊座では社会という集団のルールに反しない限り立場が守られます。
しかし、家族や仲間内にもそれぞれの決まり事というか、身内に適用される暗黙の了解やルールがあったりしますね。
家庭や家族を小さな小集団の社会であると考えるなら、両者は規模の違いはあるものの、集団と守護のサインであることは同じです。
夏至にまつわる祝祭や神話伝承
北半球の夏至は、一年で最も昼が長く、太陽の力が最も輝く特別な日です。この自然の節目は、古くから世界各地で祝われてきました。
この時期の有名な文化伝承をいくつかご紹介します。
夏越の祓(なごしのはらえ):日本
全国の神社で毎年6月30日に行われる神事です。これは、半年間の間に溜まった罪穢(つみけがれ)を祓い清め、残りの半年の無病息災を祈願する伝統的な行事です。
茅(ちがや)という大縄で作られた輪をくぐる「茅の輪くぐり(ちのわくぐり)」や
人の形に切り抜いた紙に息を吹きかけ撫でることで、自身の罪穢をその紙に移し、川や海に流す「人形(ひとがた)流し」があります。
ミッドサマー(Midsommar):北欧
スウェーデン、フィンランド、ノルウェー、デンマークなどの北欧諸国で祝われる、夏至祭。
特にスウェーデンではクリスマスと並ぶ重要な祝日とされており、多くの人々が帰省し家族や友人と祝います。
キリスト教以前のスカンジナビアの太陽崇拝に起源をもつこの祝祭は、一年で最も昼が長いこの時期に、
太陽の恵みと豊かな収穫への感謝を捧げ、悪霊を払い、豊穣と多産を祈願する意味合いも持っていました。
ストーンヘンジ:イギリス
イギリスのストーンヘンジは紀元前2500年頃から紀元前1600年頃に建てられた巨石遺跡です。
夏至の日の朝日が正確にサークルの中心を通るよう設計されており、毎年この時期は世界中から人々が集まり、神秘的な日の出の瞬間を祝うそうです。
普段は立ち入りが制限されているサークル内への入場が特別に許可され、古代ケルトのドルイド僧のような白装束を身につけ、夜通し歌い踊る人々もいるらしいです。
イワン・クパーラ(Ivan Kupala):ロシア
東スラブの夏至祭で、聖ヨハネの日(グレゴリオ暦では6月下旬)に祝われる、豊穣と浄化を願う祭典です。
火と水が重要な役割を果たし、焚き火を飛び越えたり、草花で作られた花冠を川に流したりするそうです。
チチェン・イッツァのピラミッド:メキシコ
春分と秋分にはピラミッドの階段にククルカン(蛇)が現れることで有名な古代マヤの遺跡では、
夏至(冬至)の日の出または日没の際、ピラミッドの一面が太陽の光と影の部分にちょうど半分に分かれる現象が確認されているそうです。
これは太陽のめぐりに感謝し自然界の光と影、陰と陽の切り替わりを、示しているようです。
この時期の開運行動は
太陽のエネルギーが満ちるこの時期は、外側で起きている「陽の極まり」から「内側の成熟」へ転換していくタイミングです。
春にぐんぐん成長した植物たちは、花をつけた後は実りの為に、成長エネルギーを外側から内側へと変化させていきます。
夏本番を迎え日照時間が最も長くなるこの時期は、陽の極みであるからこそ意識的に陰の時間を取り入れるのがおすすめです。
- 感情を大切にする
蟹座は心や無意識を司るサイン。小さな違和感も無視せず大切に。 - 家や居場所を整える
暑さから室内で過ごす時間も増えてきます。快適に過ごせるよう模様替えや掃除もおすすめです。 - 食や水を意識する
月は水のサインです。みずみずしい旬の野菜を使った料理や、質の良い水を取り入れましょう。 - 静かな時間をもつ
陽が極まるときだからこそ、意識的に休息やリラックスなど、陰の時間を作りバランスをとりましょう。
いよいよ夏本番、寝苦しくなり朝早く目が覚めてしまうこともあるかもしれません。
そんな時は、身体と相談したうえで、そのまま起朝の静かな時間を堪能するのもおすすめです。
せっかく目が覚めたのなら朝日を浴びて新鮮なエネルギーを体に取り込みましょう。
可能であれば比較的過ごしやすい早朝に、屋外で軽いストレッチや、ぼーっと過ごしてみるのも良さそうです。
夜は明るい時間が長いので、家の中はカーテンでほどよく暗くし、早寝早起きのリズムを維持して体内のサイクルを整えるとよいでしょう。
まとめ
二十四節気の「夏至」は、北半球で昼の時間が最も長くなるタイミングです。
立夏からグラデーションで始まっていた夏が、ここ夏至において陽が極まり夏本番に至ると同時に、陰へ切り替わる折り返し地点となります。
占星術では蟹座0度に太陽が入るタイミングで、蟹座(月)と対極の山羊座(土星)が指し示すように、
夏至は「活動と休息」の相反する要素のバランスや「外的活動から内的基盤作りへの転換」というエネルギーの変容が起こる時期でもあります。
夏至や冬至のような節目には、自然や宇宙の巡りと身体とココロの調和に向き合う、絶好のタイミングのように感じますね。
太陽蟹座入りのタイミング、夏至を健やかに過ごしましょう。